空間の価値を活かすものとして、照明計画やインテリアコーディネートなどの「ソフトとしての空間構成」があげられます。とりわけ、空間に飾られる造形装飾やデコレーションは、内装などのハードの良さと相まって、別次元の価値を生み出す、いわば、空間プロデューサーの企み・意図を大きく反映させられる領域です。
造形装飾の創作活動は、まず、空間そのものが造形対象物を巧妙に据えるための「器」であると考えます。優れた造形装飾は、「まっ白なキャンバス」から思い浮かんだイメージを「立体」で描くところから生まれます。造形装飾を手掛ける人はもちろん、この考え方は、ハードを手掛ける建築家の空間創り・街づくりの発想源にもなるのではないでしょうか。
今回はその発想のお手本の一つ、ダッチデザイン(Dutch Design)を考察します。とくに、「飛び出したディスプレイ」「飛び出した建築」を造形装飾の背景から関連づけてみました。オランダならではの建築文化から生まれたユニークな造形装飾で、ダッチデザインのユニーク性をご堪能下さい。
建築、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、そしてフローラルアートとガーデニングデザインを含めた「ディスプレイ造形装飾の分野」において、ダッチデザインは、ヨーロッパの中でもデザインに対する取り組みが特異(注1)であるといわれています。
オランダの国内の都市の街を歩けばその多様性に気づきます。
(注1)干拓作業による、作業上の平等の精神から生まれる「個人に対する尊重」が、個性と主張の力を生みました。オランダ絵画の世界での平等の精神は、レンブラントやフェルメールの作品に見られるように、貴族の注文肖像画は皆無で、働く人と庶民をモデルにしていることからも読み取れます。
東京風姿の造形部門として、ウィリアム・モリスの持つ「頑なクラフトマンシップ」を継承しつつ、
「ダッチデザインのユニークな造形的発想」を大切にした創作活動を、
「東京風姿ならではのオリジナリティある造形装飾」へと役立ててまいります。